頚椎症性脊髄症について

手指がうまく動かない患者を診たら

内科疾患(脳梗塞、Parikinson病、筋委縮性側索硬化症脊髄小脳変性視神経脊髄炎多発性硬化症亜急性連合性脊髄変性症

頚椎疾患(頚椎焼成脊髄症、後縦靭帯硬化症などの圧迫性脊髄症

を疑って診察を進める必要があります。

①歩容の観察 ②外傷歴の有無 ③発症からの時間 ④左右対称性 ⑤10秒テスト ⑥ 膝蓋腱反射の評価を行います。

①歩容の観察

・急にすごい勢いで前方移動が始まる歩行(突進様歩行)→Parkinson病

・片側下肢をぶん回すような歩行(分回し歩行)→脳梗塞

・ロボットダンスのようなぎくしゃくとした歩行(痙性歩行)→圧迫性脊髄症

・歩行障害+るい痩→亜急性連合性脊髄変性症(ビタミンB12欠乏)

②外傷歴の有無

軽微な外傷を契機に症状が急性増悪するものは圧迫性脊髄症です。

圧迫性脊髄症の急性増悪は頭部外傷時に頚部が過伸展となり、脊髄圧迫が瞬間的に増悪します。

③発症からの時間

・外傷のない急激な発症→脳梗塞

・左右差がある→脳梗塞

・軽微な外傷を契機に発症→圧迫性脊髄症

・両側性→圧迫性脊髄症

④手の観察

・細かい震え(姿勢時振戦)→Parkinson病の可能性

・小指球筋と第1背側骨間筋の両方の萎縮→圧迫性脊髄症

・第1背側骨間筋の萎縮+、小指球筋の萎縮 -→筋委縮性側索硬化症(split hand)

・しびれの領域が薬指全体でなく、尺側、橈側に明確に分かれている→手根管症候群

・10秒テスト 20回を下回ると巧緻性運動障害ありの診断

⑤膝蓋腱反射の評価

膝蓋腱反射の亢進は圧迫性脊髄症や筋委縮性側索硬化症で生じます。

圧迫性脊髄症

症状改善には適切な手術タイミングが必要になり、保存療法を継続する場合にも一度脊髄外科専門医の診察が大事です。

服部分類があり、病状の把握に役立ちます。

脊髄の圧迫が進むにつれ

病型Ⅰ 「上肢の症状のみ」

病型Ⅱ「上肢の症状+膝蓋腱反射亢進」

病型Ⅲ「上肢の症状+膝蓋腱反射亢進+下肢の温痛覚障害」と病状が進行します。

一方で下位頚椎(C6/7/Th1)のみの障害では上肢症状が顕著でなく下肢症状(歩行障害)が初発の場合もあります。

手術で取れやすい症状→痛み、麻痺を伴わない運動症状

手術で取れにくい症状→しびれ、麻痺、頚部痛

頚椎症性脊髄症患者は歩行困難を訴えることが多いです。

歩行困難は様々な病態で起こります。また筋力低下やふらつき、下肢痛・しびれによる歩行困難などさまざまな臨床像を呈し

診断が困難になることがあります。代表的は歩行障害についてまとめます。

1 痙性麻痺

脊髄障害による歩行困難です。ふらつく、つまづく、転びやすいと訴えます。階段を上ることはできるが、降りることができないという主訴や小走りができないと訴えることが多いです。これらは上位ニューロン障害により生じる痙性麻痺が原因の歩行障害です。痙性麻痺では必ずしも下肢の筋力低下があるとは限りません。

2 間欠性跛行

動けば動くほど下肢のしびれ、疼痛が強くなることが特徴です。そのような変動性がある歩行障害は脳梗塞や神経内科疾患ではほとんど見られません。腰椎由来の間欠性跛行は馬尾神経型と神経根型に分かれます。馬尾神経型は両側下肢のしびれ、神経根型は片側の下肢痛が主な症状となります。

3 急性の脊髄症

両下肢の力が入らない場合を対麻痺といいます。外傷を伴わない急性の対麻痺の原因として、脊髄梗塞、脊髄出血、多発性硬化症、脊髄炎などが挙げられます。脊髄梗塞であれば、運動障害が出現する数分-数時間前から髄節性の異常感覚や疼痛が出現することが多いです。多発性硬化症では脱力やしびれ、めまいといった多彩な神経症状が同時に出現することが挙げられます。

4 脳梗塞

左右どちらか手足の力が入らない場合を片麻痺といい、脳梗塞、脳出血など脳の血管障害の可能性が高いです。

痛みを伴う片側の下肢だけの麻痺が起きる場合もあり、下肢の血管閉塞も考慮しなければいけません。

5 神経内科疾患

a parkinson病

背中が丸まり、無表情でよちよち歩きになります。中脳黒質のドパミン神経の変性によって、線条体ドパミン濃度が低下することによります。何もしないのに手が震える、動こうとしてもなかなかすぐに体が動かない、声が小さいなどもparkinson病の特徴です。

b 正常圧水頭症

水頭症とは脳室内の過剰な脳脊髄液の貯留を指します。正常圧水頭症は水頭症の一種で、高齢者に多いです。

①歩行困難

②尿失禁

③認知症 上記3つの症状が徐々に現れます。

・足背動脈・後脛骨動脈の触診

これらの動脈が触知できない場合は下肢閉塞動脈硬化症(ASO)を疑います。確定診断には足関節上腕血圧比(ABI)が有用です。ABIが0.9以下でASOを疑います。下肢動脈造影検査で下肢の血管に明らかな閉塞がある場合は血管カテーテル治療を検討します。

Myelopatthy hand(頚髄症の手)

頚髄症患者の手の兆候は手内筋の髄節障害を伴う下位頚髄障害を除き、索路兆候です。

Myelopathy handの特徴は「開きづらい手」と「尺側の指がいうことをきかない手」であり、前者はfinger escape sign、後者は10秒テストにより評価します。

10秒テストで開きにくい手の病態として、屈筋トーヌスの亢進、拮抗筋間の切り替え運動が素早くできないことが挙げられます。尺側遅れは頚髄症の重症度と相関するとされます。

finger escape signの尺側優位の麻痺の原因として、錐体路(および大脳皮質運動野のおける身体各部支配)の尺側3指と母・示指支配ニューロン数の差が原因でると考えられる。

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