上腕骨骨幹部骨折について

上腕骨骨幹部骨折

上腕骨骨幹部骨折は高齢者だけでなく青壮年における高エネルギー外傷や投球動作などによる過度な捻転力により生じることがあります。

当院に内科入院中の患者さんがトランス解除後に右上腕痛を訴えており、経過観察していましたが、胸部X線で上腕骨骨幹部骨折が発覚しました。高齢であったことから保存加療にするつもりでしたが、デゾー固定のみでは患者の疼痛強く手術希望あったため、来週Zimmer社のANN longで手術することになりました。

上腕骨骨幹部骨折は比較的遭遇することが多いですが、一番の問題は橈骨神経障害でしょうか。

当院では術前に橈骨神経障害がみられた症例では早期の手術を計画し、手術で実際に橈骨神経を確認しにいきます。

以前に術前から橈骨神経麻痺があった上腕骨骨幹部骨折にたいしてプレート固定を行った症例では、らせん状の骨片が橈骨神経をひきのばしておりました。幸い、神経の断裂はなかったので、固定のみでおわりました。現在術後3か月程度ですが、わずかに橈骨神経症状改善してきています。無事に回復してほしいところです。

~以下、上腕骨骨幹部骨折についてまとめてみました~

本骨折に遭遇した際は神経症状の有無の確認が必須で、特に橈骨神経麻痺は解剖学的に最も注意を払わなければいけません。

上腕骨骨幹部は周囲の血流は悪くないため、保存療法でも良好な骨癒合が期待され、患部の自重により屈曲・伸展方向の変形に関しては良好な整復位が得られやすいです。

一方で多少の内旋変形を生じやすいですが、日常生活には大きな支障は生じないことが多いです。

また手術の目的は良好な整復位を獲得し、早期の可動域訓練を開始することです。

手術の選択肢は髄内釘固定とプレート固定があります。

・髄内釘固定

1番のメリットは骨折部を大きく展開することなく、髄腔を占拠することで強い初期固定力を獲得し、骨折部の生物学的活性を阻害することがないため、骨癒合が良好である点です。

デメリットとしては釘挿入時に肩腱板を切開するため、腱板機能が一時的に低下する可能性があることです。プレート固定例と比較して、肩の可動域が低下することが多く、髄内釘の適応は高齢者が多いです。

髄腔が細すぎる症例や骨折線が遠位まで及ぶ症例で十分な横止めスクリューが挿入できない場合があり、注意が必要です。

・プレート固定

最も多いアプローチ法は上腕骨の後方より進入しプレートを設置する後方アプローチです。

橈骨神経以外には大きな障壁はなく、上腕骨の形状は背側が平面であるため、プレート設置も容易です。

従来のプレート固定は良好な整復位ならびに強固な固定性を獲得できますが、大きな展開が必要であり、過度な骨膜剥離を要し、骨癒合に不利な場合があります。

そのデメリットを解消するため、現在はMIPO法が行われることが多いです。

MIPO法は

①骨折部を直接展開しない

②全体のアライメントを整えるのみで細かい整復はしない

③比較的強固な初期固定性を得る

以上の3点を目的とし、早期社会復帰が達成されます。

・保存療法

保存療法を選択する場合は、受傷後早期はギプスシーネや三角布で局所安静を保ち、ファンクショナルブレースを作成します。

受傷2週程度でファンクショナルブレースを装着した状態で肘関節と肩関節の可動を開始します。

3か月程度は入浴時を除き、常時装具を着用します。

投球動作の再開には完全な骨癒合が必要であり、全力投球を含めたスポーツへの復帰は4-8か月かかります。

私はまだ上腕骨骨幹部骨折を保存加療でみた経験がありません。

骨癒合まで内心緊張しながらみることになりそうですね。

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